なぜ今、就業規則が大切か?

少し前までの日本では、終身雇用が当たり前でした。
会社の人間関係は、家族の人間関係に似ていて、就業規則などという客観的なルールがなくても、人情でつながっていることができました。


でも最近は、非正規社員といわれる、派遣社員や、期間を定めて雇われる契約社員、パートやアルバイトが増加しています。
非正規社員をたくさん雇うと、経費の面での負担は軽くなりますが、会社に愛着を抱くほど長くひとところにとどまらない人のなかには、自分の権利だけをとことん主張する人もいます。また、人の出入りが激しくなるということは、悪意のある人が御社に入り込む可能性も増すということです。


以前は、少し気に入らないことがあっても、「ここの会社にずっといなくてはいけないものな」と大人しくしていたかもしれない従業員も、終身雇用の保障がなくなれば、「もっといい条件の会社に移ろう」と考え、その「移る」ときに、「どうせ辞めるなら、今までの残業代を全部払ってもらわなくては」「有給を全部消化してやらなきゃ」と考えることは、ある意味、自然なことです。


現在、経営者と従業員のあいだの紛争(労使紛争)の件数は年々増加しています。
個別労働紛争の相談件数は、平成17年度には17万件を越しました。
その数は、平成14年から、毎年10%以上ずつ増えていっています。
原因の一つには、法的な整備が整い、簡易的な手続きで紛争を解決する手段が増えてきていることもあげられますが、上記のような雇用形態の変化というのも影響しているものと思われます。


労働紛争になり、あっせんや裁判などになると、お金や時間が取られてしまうのはもちろん痛いですが、それ以上にきついのは、精神的なダメージだと言います。
今まで同じ目的を持って、自分の会社のために働いてくれていると思っていた人と争うことになるなんて、誰でも避けたいことです。


紛争を避けるためにはどうしたらいいか?
一番大切なのは、職場の人間関係や信頼関係を良好に保つことです。
就業規則などというルールがなくても、お互いが分かり合える環境があれば、それに越したことはないと思います。


ただ、なかなか完璧な人間関係ばかりの会社というのは作れないものです。
(その可能性は信じていますけれど!)
ですから、いざというときの保険という考えでもいいと思います。
その「いざ」というとき、会社を守れるように、手は打っておきましょう、というのが私の想いです。


例えば、「休業は2年間まで」という規程があり、しかも休業中に補償を払う規程まで作ったとします。
そして、大切な社員が大きな病気にかかってしまった。
でも、会社としては、すぐに新しい人を雇わなくてはいけないし、2年間も会社に来ない人のために補償を払う余裕などはありません。
そのとき、社長は
「現実的には無理なので、休業は3ヶ月だけにしてくれ」
と社員に言うかもしれません。
それに対して、社員かその家族は、
「でも、就業規則では2年まで補償してくれることになっています。お願いします」
と、初めは懇願するでしょう。
でも、社長をどうしても条件が折り合わないとき、
「こんな冷たい会社だとは思わなかった。裏切られた」
と、どこか紛争解決の機関に駆け込む可能性もあります。
でも、初めから「休職は3ヶ月」となっていたら、社員も裏切られたとは感じないでしょう。

要はそれだけのことです。
でも、「それだけ」のできていない会社が案外多いのです。
いつか地震が来るかもしれないと思いながらも、なかなか非常食を準備できないようなものかもしれません。
でも、忙しい今の仕事をほんの少し中断して、就業規則をもう少し見直してみませんか?
時間があるようでしたら、社長自らで勉強しながら、就業規則を作り直しても良いと思います。
もし専門家のアドバイスがあった方がスムーズに見直し作業を行えそうだと思ったら、相談してください。